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なぜか仕事がうまくいかないあなたへ~ 世界を変えるアイデアは、冬の日の「バチッ」に隠れていた ~

Discovery
2025年6月13日

「なんで、これ、うまくいかないんだろう?」
学校の課題や、アルバイト、社会人になった人なら日々の業務で、そう頭を抱えた経験は誰にでもあるはず。頑張っているのに空回り。次から次へと問題が湧いてきて、まるでモグラ叩きみたい…。そんな風に感じる瞬間、ありますよね。
実は、その「うまくいかない」の正体、私たちのものすごく身近なところにも潜んでいるんです。

冬の乾燥した日、ドアノブに触れようとして「バチッ!」とくる、あの嫌〜な静電気。誰もが知っているこの現象ですが、よく考えてみてください。いつ、どこで、どれくらいの強さで「バチッ」とくるか、正確に予測できたこと、ありますか? ありませんよね。
静電気が厄介なのは、まさにこの「見えない」で「予測できない」ところにあります。これって、なんだか私たちの日常や仕事で起きる「うまくいかない問題」と、少し似ていませんか?
もし、この見えないはずの静電気を、まるで見えるようにしてしまう魔法があったとしたら...

実は、そんな魔法のような技術を本当に開発してしまった研究者たちが、産業技術総合研究所(産総研)にいます。彼らの物語は、単なる科学の成功譚ではありません。私たち若手世代が、目の前の壁を突破し、新しい価値を生み出すための「考え方のヒント」に満ち溢れています。

今日は、その魔法のタネを、一緒に探してみませんか? この記事を読み終える頃には、あなたのモヤモヤした悩みを解決する、新しい視点が手に入っているかもしれません。

なぜか仕事がうまくいかないあなたへ ~ 世界を変えるアイデアは、冬の日の「バチッ」に隠れていた ~

「なぜ?」を5回繰り返すより、たった1回の「本質的な問い」を見つける

問題解決の手法として「なぜ?を5回繰り返そう」と聞いたことがある人も多いでしょう。もちろんそれも大切。でも、もっと大事なのは、その「なぜ?」の矢印が、ちゃんと問題の “ど真ん中” を射抜いているかどうかです。
静電気の研究者、菊永和也さんは、まさにその達人でした。

当時の産業界では、静電気による電子部品の故障が大きな問題でした。それはもう、何十年も前から続く悩み。現場では「故障が起きたら、対策を考える」という、まさに出たとこ勝負のモグラ叩きが繰り返されていました。
ここで菊永さんは、多くの人が見過ごしていた、もっと根本的な問いを立てます。

「そもそも、なぜ静電気はこんなにも厄介なんだろう?」

彼は、その原因を3つのポイントに分解しました。

  • 物事の「本質」を見抜く問いを立てる。
  • 自分の「当たり前」を武器に、分野の壁を越える。
  • 仲間との「対話」の中で、アイデアを育てる。

そして、この3つの問題点を貫く、たった一つの根本原因にたどり着きます。
それは、**「静電気は、見えないからだ」**と。

この瞬間、ゴールは劇的に変わりました。「部品の故障を防ぐ」という対症療法から、「静電気そのものを見えるようにする」という、誰も考えなかった、しかし最も本質的な挑戦へと進化したのです。

私たちも、日々の仕事や課題で「うまくいかないな」と感じたとき、菊永さんがしたように、一度立ち止まって深呼吸をし、これまでを穏やかな心で振り返ってみるべきなのかもしれません。目の前の問題ばかりに囚われず、「そもそも、この問題が起きている本当の原因ってなんだっけ?」と問いかけてみる。表面的な事象に振り回されるのではなく、その奥に潜む「たった一つの本質的な問い」を見つけ出すこと。それこそが、ただの作業者で終わるか、未来を切り拓く創造者になるかの、大きな分かれ道なのかもしれません。

なぜか仕事がうまくいかないあなたへ ~ 世界を変えるアイデアは、冬の日の「バチッ」に隠れていた ~ 静電気の「見える化」という発想が、世紀の大発見の第一歩だった

自分の「当たり前」を武器に、知らない世界へ飛び込んでみる

「自分には、特別な専門知識なんてないし…」
そう思う人もいるかもしれません。でも、本当にそうでしょうか。もう一人の研究者、寺崎正さんのアプローチは、そんな私たちに勇気を与えてくれます。

寺崎さんは、菊永さんとは専門が全く違う「化学」の研究者。しかも、彼の探求心は研究室の中だけに留まりません。学生時代から熱心な食べ歩きを続け、飲食店のレビュー数は学術論文の数を「圧倒的に」上回るという、なんともユニークな人物です。
そんな彼が、電気の専門家である菊永さんから「静電気を見えるようにしたい」という壮大なテーマを聞いたとき、頭に浮かんだのは、非常にシンプルで、彼にとっては「当たり前」の疑問でした。

「電荷(電気の粒)がやってきて、光らないことなんてあるんですかね?」

化学の世界で、物質がエネルギーを受け取って光る「蛍光」は、ごく自然な現象です。彼は、自分のフィールドでの「当たり前」を、静電気という未知の領域に、ポンと投げ込んでみたのです。
結果は、歴史的なブレイクスルーにつながりました。この「化学者にとっての常識」が、電気の専門家たちが見落としていた、全く新しい解決の扉を開いたのです。

これは、私たちにとって大きなヒントです。
あなたが、寝る間も惜しんで熱中しているゲーム。何度もリピートして聴いている音楽。細部までこだわっているファッションやメイク。それら、あなたが「好き」で「当たり前」だと思っている世界観や知識も、他の誰かにとっては、全く新しい「驚きの視点」になる可能性を秘めています。
自分の専門分野や得意なことの枠内に留まる必要はありません。自分の「当たり前」を、恐れずに、全く違う世界にぶつけてみる。あなたの「好き」は、世界がまだ気づいていない問題に対する、最高の武器になるかもしれないのです。

なぜか仕事がうまくいかないあなたへ ~ 世界を変えるアイデアは、冬の日の「バチッ」に隠れていた ~ 化学の世界で、物質がエネルギーを受け取って光る「蛍光」は、ごく自然な現象

最高のアイデアは、「会議室」ではなく「ワクワクの共有」から生まれる

本質的な「問い」を立てる菊永さんと、常識を越える「視点」を持つ寺崎さん。この二人が出会ったことで、イノベーションに火がつきました。しかし、その炎が大きく燃え上がったのは、二人の間に「ある関係性」があったからです。

彼らは、寺崎さんのアイデアを基に、いくつかの候補となる材料で実験を始めます。すると、驚くべきことに、最初に試した材料の一つが、目も覚めるような強い光を放ったのです。世界初の発見の瞬間。
そのとき、二人はどうしたと思いますか?

「徹夜でデータを解析し、論文を書き始めた…」わけではありませんでした。
彼らは、その日のうちに、喜び勇んで飲みに行ったのです。

「今の、すごかったよな!」「なんであんなに光ったんだ!?」

予期せぬ成功や、常識では説明できない現象に遭遇したとき、彼らはそれを一人で抱え込みませんでした。すぐに互いの興奮と驚きを共有し、ワイワイガヤガヤと議論を交わす。その熱量のある対話の中から、「指と材料の間で、小さな放電が起きているのかもしれない」という、次のステップにつながる新たな仮説が生まれていきました。

最高のアイデアは、整然とした会議室の、予定調和な議論から生まれるとは限りません。むしろ、仲間との何気ない雑談や、「これ、すごくない!?」という純粋なワクワク感の共有の中から、ふと顔を出すことの方が多いのです。
もしあなたが、何か面白いことを思いついたり、すごい発見をしたりしたら、一人でニヤニヤしていないで、すぐに信頼できる仲間に話してみてください。もし、仕事で壁にぶつかって悩んでいるなら、一人で抱え込まずに「ちょっと聞いてよ」と声をかけてみる。
アイデアは、人と人の対話というキャッチボールの中で、磨かれ、変化し、より強く、より面白く進化していきます。特に、リモートでのやり取りが増えた今だからこそ、意識的に「遊び」のあるコミュニケーションを取り、互いの心を動かす対話の場を作ることが、これまで以上に重要になっていると言えるでしょう。

なぜか仕事がうまくいかないあなたへ ~ 世界を変えるアイデアは、冬の日の「バチッ」に隠れていた ~

あなたの日常に隠された「イノベーションの種」を見つけに行こう

産総研の二人が成し遂げた「静電気の可視化」という大発明。
しかしそれは、たった3つのシンプルが生み出したものでした。
これは、特別な才能を持つ研究者だけの話ではありません。私たち一人ひとりが、明日から実践できる、普遍的な「考え方のヒント」です。

ちなみに、この研究には面白い後日談があります。研究者たちが、離れた指先から材料が光る現象を発見したとき、その当初の目論見は、なんと「静電気で光るライトセーバーを作りたい」という、壮大な遊び心だったそうです。
世界を変えるようなイノベーションは、案外、そんな純粋な「面白い!」や「やってみたい!」というワクワク感から始まります。

さあ、この記事を読み終えたあなたが、明日からできることは何でしょう?
まずは、いつも見ている風景を、ほんの少しだけ違う角度から眺めてみませんか。
毎日使うアプリの「ここ、もっとこうだったら良いのに」。
いつも聞いている音楽の「このコード進行、なんでこんなに気持ち良いんだろう?」。
あなたの日常に潜む、その小さな「なぜ?」や「面白い!」こそが、まだ誰も見たことのない未来を創り出す、最高に価値のある「イノベーションの種」なのですから。

【引用・参考資料】

産総研マガジン 2025年6月4日 「【ナゾロジー×産総研マガジン 未解明のナゾに挑む研究者たち】「最初はライトセーバー作ろうと思ってた」静電気を“見えるように”したニ人の科学者
https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20250604.html

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